Ciao、チャーオ!シチリア島に住むマリコ (@m_a_g_g_i_o) です。
突然ですが、みなさんイタリアやシチリアに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?真っ赤なトマトに美味しいピッツァやパスタ。歴史的建造物が街のあちこちにあって、おしゃれなファッションに身を包む人々?
そんな素敵なイメージでいっぱいのイタリアですが、実はスラング言葉「パロラッチャ」がかなり豊富なのはご存じでしょうか。実際イタリアに住んでみると「パロラッチャ」なしではイタリア人のユーモアについて語ることはできません!
ということで、今日は「パロラッチャ」についてお話してみたいと思います! ※今回の記事は内容の特性上下品な言い回しがたくさん出てくるので、苦手な方&美しいイタリアのイメージを汚したくない方は回れ右でお願いします。
もくじ
パロラッチャとは?

パロラッチャとはイタリアのスラング言葉の総称です。
日本人はあまり日常生活でスラング言葉を口にすることはないと思いますが、イタリア人(特に男性)は普通の日常会話にもパロラッチャを混ぜるし、テレビでデモの映像なんかが流れたときにもぴー音入れずにそのまま流れます。
そのくらい「パロラッチャ」は彼らにとっては身近なものです。
このパロラッチャについての記事を書こうと思ったのもシチリア人旦那に「きみ、シチリアについていろいろ記事を書いてるなら、パロラッチャについて書かなきゃダメだよ」との熱弁があったからだったりします。笑
さっそくパロラッチャを紹介します
さっそくパロラッチャを紹介していきたいのですが、まずは注意事項を書いておきたいと思います。
※ イタリアでも使わない人は使いません。
※ 女性は使うべきではありません。
※ この記事を参考にパロラッチャを使ってトラブルが生じたとしても一切責任は持てません
アヤシげなサイトと間違われると困るので、今回のイタリア語は全部カタカナで表示&場合によっては伏せ字を入れさせていただきます。
では早速いってみましょう!!!
直訳すると男性の陰茎。超代表的なパロラッチャです。ほんとうにほんとうによく使います。わりと上品な雰囲気のイタリア人も普通に会話の中に使っていたりして、ぎょっとしたりしますが、お行儀の悪い言葉には変わりありません。
使用例:机の角に足をぶつけたときのひとり事、いらっとしたとき、「チッ」て感じで使うことが多いです。そのほか普通の文章に挟んでいろいろ応用して使うのですが、これがなかなかおもしろいです。(詳しくはのちほど!)
直訳するとストローンツォは「うんこ」という意味です。そのまま「くそったれ」というニュアンスになります。カッツォと違って他人に対して使います。あとは、親友レベルの友達と冗談で使う事もありますが、品位が問われるので基本的には外国人は知っておくだけにしましょう。
使用例:街を歩いていてぶつかったのに何にも言わない人とかと出くわした時、テレビのコメンテーターの発言が気にくわない時、親友との冗談など
ストローンツォが「ふつうのうんこ」の事だとすると、ストロンツォーネは「でっかいうんこ」という意味です。ストローンツォよりもストロンツォーネの方が怒り強くこめられている感じになりますが、観察している限りではそこまで使い分けている感じはないように思います。こちらも冗談で使うことがありますが、いずれも外国人は使わないでおきましょう。
使用例:ストローンツォとほぼ同じ
直訳すると「タマが壊れるわ!」という意味です。笑もちろんタマというのは男性のアレのことです。これは男同士の会話の中でけっこう頻繁に聞く言葉なのですが、はじめて意味が分かったときは思わず笑ってしまいました。なにかしようとしているところに横やりが入ったときなんかによく聞きます。
使用例:夜中に近所のアパートでどんちゃん騒ぎが始まった時とか。直近で体験したのだと、主治医から妊婦の特殊検査を受けるため遠くの病院へ行くように言われた時、夫が「言われたから行くしかないけど、今回ばっかりはあの医者ロンペ・リ・コリオーニしてくれたわ〜!」みたいな感じで使ってました。これはまあ、仕方ないんですけどね。相当不便な場所だったというわけです。笑。
直訳すると「うんこしてこい」という意味になるヴァイ・ア・カガーレは「あっち行け!」「消え失せろ!」というニュアンスです。これも他人に対して使いますが、信頼関係のある人同士だと冗談で使うこともあります。ただ、やっぱり私たち外国人は使用を控えるべきです。
ちなみに「カガーレ」は「うんこする」という動詞ですが、お行儀の悪い言い回しなので上品な人は使いません。
使用例:私が聞いたことあるのは、主に友達同士の冗談の会話の中でです。つまらないオヤジギャグを言った人がヴァイ・ア・カガーレって言われてました。笑。深刻な場面では使ってはいけません。
※ 絶対に使ってはいけません
直訳すると「うんこのかけら」という意味になります。笑。これも他人に対して使いますが、私が受ける印象としてはストロンツォよりも危険な言い回しだと思います。
使用例:私が実際この言葉を聞いたシチュエーションで一番新しい記憶は、テレビで報道されていたデモ行進の映像です。ある政治家を批判する言葉として、デモ隊が大声で「ペッツォ・ディ・メールダ!」と叫んでいるのを見ました。

※ 絶対に使ってはいけません
訳すのも躊躇するレベルの相当ひどい言葉です。直訳すると「頭がカッツォ」という意味になります…。笑。つまり「いかれてやがる」っていう意味ですね。他人に対して使います。
使用例:車の運転でひどい割り込みにあったとき、気に入らない政治家の発言、救いようがないほど堕落した人について話す時など「あいつはまじでテスタ・ディ・カッツォだな」みたいな感じです。
※ 絶対に使ってはいけません
これもかなりきつい言い回しで、直訳すると「春婦の息子(娘)」という意味。男性に向かってはフィーリオ、女性に向かってはフィーリアを使います。ニュアンスとしては上のテスタ・ディ・カッツォと同じような感じです。
使用例:上と似たような意味です。かなり頭にきているときに使います。
※ 絶対に使ってはいけません
※「ケツの穴に突っ込んだろうか」という意味の危険な言い回しです。
使い方は二通りあって、自分自身に使う場合と他人に向かって使う場合がありますが、後者はとんでもなく危険です。イタリア人は親友との会話で冗談で使う場合もありますが、勝手のわからない私たち外国人は絶対に使ってはいけない言葉です。
ちなみに、この言葉はシチリアが舞台の映画「ニューシネマパラダイス」で少年トトがアルフレードに向かって叫んでいるのが印象的です。
使用例:親友との会話で冗談で使う場合、ひとりでいらいらして使う場合、本当の喧嘩で他人に対して使う場合の3パターンです。旦那が自分で瓶を落っことして割った時、怒りをどこにもぶつけることができず、ひとりで言ってました。笑
カッツォは塩のように…
「カッツォは塩のように何にでもつけることができる。」 シチリア旦那談
「なんのことやら?」と思うかもしれませんが、パーソナルユーズでの使い道が多い「カッツォ」という言葉にはバリエーションがあります。もちろんお行儀が悪い言葉であることは変わりないのですが、イタリアらしいユーモアいっぱいなので、日々の生活の中で耳にしたことあるものをいくつか紹介します!
Che カッツォ dici?[ケ カッツォ ディーチ?]
英語だとwhat do you sayに当たるイタリア語。もともとはChe dici?[ケ ディーチ?]だけで使って「どう思う?」という意味になります。カッツォが入る事で「きみ何言っちゃってんの?」とか「はぁ?」というようなニュアンスになります。
Ho capito un カッツォ![オ カピート ウン カッツォ!]
これは普通はHo capito[オ カピート](私はわかった / 理解した)という意味のイタリア語です。ウン カッツォは「カッツォひとつ」という意味なので、直訳すると「カッツォひとつわかった!」ということになります。
つまり「サッパリわからん!」という意味です。笑
Ho mangiato un カッツォ![オ マンジャート ウン カッツォ!]
直訳すると「カッツォいっこ食べた!」という妙な言い回し。これも普通はHo mangiato[オ マンジャート](私は食べた)だけで使うイタリア語です。ウン カッツォは上記と同じ意味です。笑。
これは主に食べ合わせが悪かった時や、ろくなもの食べなかった日などに使います。
シチリア弁のパロラッチャ

ここまではイタリア語のパロラッチャを紹介していたのですが、実はシチリア州にはちゃんとシチリア弁のパロラッチャがあります。シチリア島に来ると特によく耳にするものを紹介します。
ミンキア! / ミーンキア!
シチリア弁パロラッチャで代表的なのがこのミンキア。意味はカッツォと同じです。基本的な使い方もカッツォと同じで独り言のような使い方をよく聞きます。あと例外としては、友達と話しているときにネガティブな意味での「えー!?」という驚きがあったときに「ミーンキアッ!」と言っているのを耳にします。
Ma che ミンキア é? [マ ケ ミンキア エ?]
「なんじゃこりゃ」みたいな意味のシチリア弁パロラッチャ。変な物をみた時や食べたときなどに飛び出す言葉です。どちらかというと対象の物をあんまり気に入らなかったときに使います。
たとえば、シチリア人旦那がはじめて豆腐を食べた時にこの言葉が飛び出しました。笑
ミンキアはカッツォと入れ替えて使える
だからなんなんだという話ですが、上の「カッツォは塩のように」のところで紹介した文章の「ウン カッツォ」の部分をそっくり「ウナ ミンキア」に入れ替えて使う事もできます。
たとえば…
Ho mangiato una ミンキア [オ マンジャート ウナ ミンキア]
これは私が個人的に一番気に入ってるパロラッチャです。カッツォと一緒で直訳すると「ミンキアいっこ食べた」という意味になります。ニュアンスも同じで、ろくなものを食べなかった時などに使います。
Ho capito una ミンキア [オ カピート ウナ ミンキア]
これもカッツォの時とほぼ同じニュアンス。直訳すると「ミンキアがいっこわかったぞ」という意味です。なのでやはりサッパリわからんわということです。笑
ジョークが通じる人へのシチリア土産
パロラッチャつながりということで、ジョークが通じる人へのシチリア土産として私が猛烈におすすめしたいのがこのふたつ。
ミンキアパスタ
なんと知る人ぞ知るミンキアの形をしたパスタです。運が良いとエノテカ(ワインやペーストや塩などお土産を売っているお店)で出会うことができます。こういうジョークが好きな人にはとても喜ばれます。話のネタにもおすすめです。
※わたす相手を間違えないようにしましょう。
ミンキアな形のリモンチェッロ

あまり良い写真が残ってなくて申し訳ないのですが、ミンキアの形の瓶に入ったリモンチェッロ。知らない人のために少し説明すると、リモンチェッロはレモンの甘いお酒です。これ自体は日本の輸入食品店などでもよく見かけることができますが、この形はなかなかないです。
私が見かけたのはシチリア島に4つある空港のひとつ、小さなトラーパニ空港お土産屋さん。見逃してるだけかもしれませんが、他ではまだ見たことないです。瓶なのでパスタと違って残るのがポイントで、捨てるのも勇気がいります。もちろんまともなリモンチェッロはいっぱい売ってます。
パロラッチャは知っておくだけで使わない
パロラッチャのおもしろいところは、スラング言葉と言えどイタリア人のユーモアに触れることができる部分にあるんじゃないかなあと思います。
今回はかなり詳しく書きましたが、私たちにはネイティブの人が持っている感覚が備わっていないので、予備知識としてそっと心に仕舞っておくのが無難です。
語学や歴史に興味がある人からすれば、イタリア人やその周辺について知るための手がかりとして、なかなか興味深いことのように思います。